fabcross Meetingレポート
【fabcross Meeting】支援額は3人合計300万円超! だからこそ見えてくるクラウドファンディングの世界
3人の思い出深いプロジェクト
高須さんの思い出深いプロジェクトは、ロボティクス教育ツールの「Makeblock」。現在は200人ほどの会社になっているが、当時は5人。そのころから支援しており、現在でも交流があるという。
また、予定から9カ月遅れて手元に届いたアニメーションGIFカメラ「OTTO」も印象深いという。支援者には開発の進捗状況が送られてくるが、部品が全部揃うまでに7カ月。8カ月目に初めて「やっているぞ」という開発者の笑顔の写真が送られてきたという。
これを笑って楽しめる人間じゃないと、クラウドファンディングは面白くないと思う
高須さんはそう言って笑う。
桜庭さんは、ドイツのメーカー、BRAGIの「The Dash」。Bluetoothでスマートフォンと接続するワイヤレスイヤホン。つい先日、iPhone 7と同時に発表された「AirPods」と似た製品だ。
生体認証機能も搭載されていて脈拍を測ることも可能。タッチインターフェースによるフリック操作にも対応。一見よくできている。
機能は豊富なんですけど、バッテリーが持たなくて。1時間半くらい使うと、バッテリーローですって声が流れるんですが、それが悲しくなるんですよね
やはり、桜庭さんも笑っている。
松崎さんは、ハードウェアだけではなく、書籍なども支援している。スウェーデンのイラストレーターのイラスト集を英語版にするプロジェクトや、動画を送るとパラパラ漫画にして送ってくれるプロジェクトなど、一風変わったものがお好きなようだ。
「フライト」というプロジェクトは、ライトそのものが浮かんでいるインテリア。給電はQiを使いワイヤレスで行われているのがポイント。現在は会社の受付に飾ってあるという。
そのほかにも、サドルのない自転車や、「ひとまねこざる」の作者のドキュメント映画など、次から次へとプロジェクトを紹介した。
松崎さんのクラウドファンディングへの愛がかなり深いことが伺える。
アイドルファンが握手券付きCDを買うのと同じ感覚
プロジェクトが成功し、無事に製品が送られてくれば問題はない。しかし、それは全体の2割。残り8割は何らかの理由により製品が手元に届かない。その理由にはいろいろある。これについて高須さんと松崎さんが実体験を基に語る。
その少し前に、中国の工場の前にミニバンを停めていて、ほんとにお金がなくてそこで寝泊まりしているという様子が書かれていましたね
その次が、提携先の工場から返送される予定の部品のリストみたいなものが出てきて
ラストは、アメリカの弁護士さんから“お金を取り戻すなら連絡してください”みたいなのが来て
そのほかにも、ヨーロッパ発のプロジェクトとしてはそれまでの最高額となる230万ポンド(当時の為替レートで約4億2千万円)を集めたイギリス発のドローン「ZANO」が失敗したときには、Kickstarterがレポーターを雇い、中立的な立場から生々しいレポートをしたという。ZANOには桜庭さんも支援していたという。
松崎さんは、このようなことが起こる場合があることを分かった上で支援をすることは大事だと語る、しかし、そのストーリーを知ることで、逆に自分たちができることはないかと思ったりもするそうだ。
ある程度いろいろ苦労があって出来上がるほうが、満足度は高いと思います。なかなか商品が来ないほうがワクワクし続けられたりとか、そういう複雑な感情が自分の中に芽生えているなという感じはします」
3人の話を聞いていると、クラウドファンディングで支援を、商品を手に入れるために行っているというよりは、メイカーの人との距離が近くなることに喜びを見出している感じがある。
アイドル好きの人がAKBの握手券付きのCDを買うのとあまり変わらないんじゃないかと思います
語弊があるかもしれませんが、そもそも起業したきっかけが、こういう新しいものとか面白いものを考えている人がとにかく好きで、きびだんごを通じた事業支援も、その人たちに仕事だと言って会いにいける口実みたいなものなのかと思っています