イベントレポート
「ファブ3Dコンテスト2017」エッグドロップ実践大会&授賞式レポート
3Dプリンターと3Dデータを利用した作品の、日本全国規模のコンテスト「ファブ3Dコンテスト」。2016年に続き2回目の開催となる今回は、合計で81作品の応募があった。参加人数も増え盛り上がりを見せたイベントから、プロ/セミプロを対象とした「3Dプリントエッグドロップパッケージ」の実践大会と、授賞式の様子をお伝えする。
「ファブ3Dコンテスト」は、3Dプリンターやデジタル工作機械など新しい技術の利活用法と、それを担う人材を発掘するため、慶應義塾大学ファブ地球社会コンソーシアムが主催して2016年から開催しているイベントだ。参加者は5つに分かれたカテゴリーの中からテーマを選び、製作の過程と結果をFabbleに掲載したものをコンテストに応募する。製作物のクオリティだけでなく、Fabbleに記述されたストーリーや試行錯誤なども審査の対象となることが大きな特徴だ。
応募総数81件! 今年のコンテストを振り返る
まずは2017年11月23日に行われたファブ3Dコンテストの授賞式の様子をお届けしよう。舞台となったのは、六本木にある東京ミッドタウン・デザインハブ。カテゴリーごとの一次審査を突破した参加者が全国から集まり、会場は立ち見が出るほどの賑わいとなった。
大会を主催するファブ地球社会コンソーシアムの代表を務める慶應義塾大学の田中浩也教授は、「サッカーの無い場所でボールは使われない」という例えを用いながら、3Dプリンターの可能性を掘り起こすための文化を作るというコンテストの位置づけを説明。第1回よりも応募総数の増えたコンテストから、その文化の広がりを感じることができる数々の受賞作を見てみよう。
カテゴリー1:小学生の部「夏休みの自由研究」
小学生の部のテーマは、自由に決めた課題について3Dプリンターを使いながら調べ、実践した結果をまとめる「夏休みの自由研究」。フィボナッチ数を見つけるためのガイドや、フィールドワークのための立体地形図など、それぞれの関心を深めるための独自の研究ツールが開発されていた。
力作ぞろいの自由研究から優秀賞に選ばれたのは、小学5年生の平野喬久さんによる「スイカの維管束Part2スイカを育ててモデリング」。平野さんは2016年のコンテストでスイカの果実の中にある維管束を3Dプリントで作成したが、2017年はなんと自らスイカを育てながら、より正確でクオリティの高いデータづくりに挑戦した。Fabbleに刻まれた5月から続く膨大な量の研究ノートを見れば、自分で手を動かすだけでなく、新しい技術や知識を他者から学びとる積極的な姿勢が伝わってくるだろう。
カテゴリー2:家族の部「暮らしの自由研究」
暮らしの改善を目指した家族の部には、ちょっとした不便を解決するようなアイデア作品が多く登場。日常のふとした気付きから生まれた作品が多く、製作の背景にある家族の関係性を感じられるのも特徴だ。
こちらの「重ねて重ねてパスタメジャー(小森領太)」は、家族4人それぞれにちょうど良いパスタを量るための作品。家族全員で穴のサイズや色を決めていくプロセスや、いずれ変化する「ちょうど良い量の形」が家族の記録として残る、そんなストーリーを感じさせる点が高く評価され、優秀賞を獲得した。
カテゴリー3:中高生の部「FAB甲子園」
「FAB甲子園」と題した中高生の部では、誰も見たことがない未来を感じさせる楽器製作がテーマ。演奏で人を魅了する「カッコイイ・カワイイ」楽器として、電子回路やセンサーを組み込んだ作品が多く集まった。
上の映像は優秀賞を獲得した「arm(大嶋俊之)」の演奏風景。電子工作とプログラミングという自らの強みを生かし、腕の加速度を検知して多様な音を鳴らす楽器を作り上げた。自身の腕にフィットするよう、3Dスキャナーを有効に活用したことも評価のポイントだ。
一見しただけでは演奏方法すら分からないような未来の楽器の数々。いくつかの受賞作は実際に会場で演奏され、審査員を巻き込みながらパフォーマンスを繰り広げていた。
カテゴリー4:クリエイターの部「笑(わら)ファブ」
実用性はほぼ度外視、ヒトを笑わせることにひたすら特化したのが「笑(わら)ファブ」部門。あまりにフリースタイルすぎたため、ダイジェスト形式で紹介していきたい。
その他「鼻血」や「アクロバティック3Dプリンティング」、「ほとけさまセッケン」など一癖も二癖もある作品がピックアップされるなか、優秀賞に輝いたのは「キメラニマルフィギュア(河田尚子)」だ。