イベントレポート
「ファブ3Dコンテスト2017」エッグドロップ実践大会&授賞式レポート
ファブ3Dコンテストで扱う全5カテゴリーのうち、デザインエンジニアリング部門では、プロダクトの性能がいっそうシビアに問われることになる。その内容は、ものづくりのプロ/セミプロを対象とした「3Dプリントエッグドロップパッケージ」のクオリティを競うというもの。「エッグドロップ」とは、生卵を高所から落としても割れないようなパッケージを作り、その性能を争う競技のことだが、3Dプリンターの利用を前提にしたものはファブ3Dコンテストが国内初となる。いかに優れたパッケージを製作したかを審査するため、授賞式に先立って「実践大会」が開催されていた。
開催地は大学のキャンパス
実践大会の舞台となったのは、神奈川県藤沢市にある慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス。全国から集まった12人の参加者に対し、慶應義塾大学の田中浩也教授とカテゴリー5の審査委員長であるデジタルアルティザン代表取締役社長の原雄司氏から競技概要について説明が行われた。
大会のレギュレーションは以下の通り。
- 必ず生卵を使用すること。
- 3Dプリンターによってパッケージを製作すること。その際、塗装を行うなどの後処理は禁止とする。
- 50cm刻みで好きな高さから投下して、卵が割れなかったときの高さを記録とする。
いたってシンプルなだけに、純粋な技術力が問われる内容だ。その後、参加者はそれぞれ自分の作成したパッケージを紹介。進行の合間には参加者同士で活発な情報交換が行われており、大学の教室というシチュエーションも相まって、とても若々しくエネルギッシュな雰囲気に満ちていた。
第1ステージは階段の上から
実践大会は高さに応じて2段階に分けて行われた。最初の舞台となる屋外の階段では、5メートルまでの高さに挑戦することができる。
挑戦する高さは自己申告で決めるため、去年の大会で好成績を出したメンバーが「5メートルなんて余裕」と言わんばかりに鳴りを潜めるなか、大学の講義がきっかけでコンテストに参加した学生など、新人たちが記録に挑んでいく。パッケージに卵を入れる向きや落とす際の角度調整などもしっかりと行い、いざエッグドロップに挑戦!
落下したパッケージから卵を取り出すのは、挑戦者本人。外からでは卵の様子が分からない上、少しでもひびが入っていると失格になるため、緊張の一瞬だ。大勢の参加者が見守るなか、卵の無事が確認されると審査員が白いフラッグを掲げ、大きな拍手に包まれた。
こちらのチームは建築系の企業に勤めるエンジニア3人で参加。専門性を生かして構造解析にも取り組んだようだが、残念ながら高さ5メートルで失敗となってしまった。なお、2016年のコンテストでも意気込んで参戦した企業チームは好成績を残すことができなかったという。なぜか本職のプロが思う結果を残せないのも、このコンテストの特徴なのかもしれない。
第2ステージははるか彼方から
大会後半には、より高さを求めて5階建ての研究棟に移動。
首を真上に向けないと見られないような高さからの投下でも、参加者たちは2階、3階、4階……とどんどん記録を更新していく。衝撃を吸収するために柔らかい素材を用いたものや、プロペラを付けて回転しながら落ちていくものなど、パッケージの工夫もさまざまだ。
次第に過酷さを増し、多くの挑戦者が脱落していくなか、ついに最上階の地上17メートルに到達。ここまでくると、落とした卵を確認しに行くのも一苦労である。
最終的に、なんと4つの作品が17メートルからの落下に耐えたのだが、今回の会場ではこれ以上の高さを用意できないため、これにて実践は終了! 純粋な記録だけでは優劣が付けられないため、デザインや機能性なども加味したうえで、最終的な審査が行われることとなった。
混戦を制した作品は?
2016年に引き続き、審査側の想定を超える記録が登場した本大会。最優秀賞に輝いたのは、空気がクッションとなる独自の構造を用いた「Reacushion」だ。落下スピードの速さや卵を取り出す機構のシンプルさなど、総合的な完成度の高さが大きく評価された。なお、作者の譜久原尚樹さんは2016年のエッグドロップコンテストでも優勝を果たしていたが、審査員の満場一致で堂々たる2連覇を達成した。
優秀賞と審査員特別賞に選ばれた2作品は、どちらもパラシュートを用いたもの。姿勢の制御や落下速度減少のために、3Dプリントでたくみに製作したひもや平面のパーツを利用している。
大盛り上がりで幕を閉じた「3Dプリントエッグドロップパッケージ」コンテスト。これ以上の高さに挑戦するためにはドローンを使うしかないのでは? といった話まで飛び出していた。来年には落下までの時間や的の中心までの距離など、新たな評価基準やレギュレーションも検討されていくことになりそうだ。