特別寄稿連載:Fabbleの使い方
Fabble Fabプロジェクトのためのドキュメンテーションサービス
慶應義塾大学SFCソーシャル・ファブリケーション・ラボは、オープンソースのウェブブラウザ「Firefox」を開発するMozillaの日本法人「Mozilla Japan」が中心となって開発を進めているオープンソースハードウェア向けドキュメント共有エンジンをベースに、2015年1月より「Fabble」というWebサービスを実験的に開始しました。
ものづくりの手順と記録を共有する機能があり、大学でのレポートやハッカソン、ワークショップでの利用を想定して、現在もさまざまな開発が進められています。本連載では、そのFabbleの開発に携わった方たちが開発の背景や利用シーンなどを解説。日本発のものづくり共有サービスについて紹介します。(編集部)
ものづくりの記録に挫折したこと、ありませんか?
- グループでノウハウ共有の Wiki を作ったが、更新する人が2人くらいしかいない。
- ブログ記事を書いているうちにブログ自体のスタイルを直したくなり、記事が書けない。
- 学生に製作の課題を出したが、どのような過程をたどっているのか、いまいち見えてこない。
- ワークショップやハッカソンの成果をまとめたい。
そんなあなたに向けたサービスが、今回紹介するFabble(ファブル)です。
Fabbleとは
Fabbleは、「Fab」プロジェクトのための、ドキュメンテーションサービスです。Fabとは産業用に使われていた工作機械の小型化/インテリジェント化と、Webの普及を背景とした「作り手、使い手の文脈やストーリーと深くひも付いたものづくり」です。現在の産業システムが解決しにくい個別の、しかしときに切実な問題を解決することができると期待されています。Fabプロジェクトを対象としているので、「作り方」だけでなく、ものづくりに密着した作り手/使い手の文脈やストーリー=ものがたりを伝えやすいような仕組みになっています。具体的には、プロジェクトの始まりに制作メモや試行錯誤の過程を整理することから、プロジェクトの終わりに、制作物を再現するための最小限の情報=レシピをつくり、共有することまでをサポートしています。
また、FabbleはWebで公開しながらものを作り、ドキュメンテーションとコミュニケーションを通じてプロジェクトを育む場として機能することを目指しています。このような状態を達成した事例が多くあるのが、オープンソースソフトウェアの文化です。
オープンソースソフトウェアは、
- ソフトウェアを誰でも利用、複製、改変、再配布できる状態におく
- さまざまなレベルでの貢献を許容する
- プロジェクトに関わる人たちがお互いにリスペクトを持って接する
といった原則のもとで、さまざまな問題の解決を図ってきました。Fabbleはこれらの特徴を指針として設計されています。
Fabbleを使う理由
幾多あるサービスのなかでFabbleを使う理由はなんでしょう?ファブラボの国際組織であるFab Foundationのプロジェクトのひとつに、Fabに役立つさまざまなWebサービスの情報を集め、まとめて紹介しているfabshare.orgがあります。fabshare.orgで紹介されているサービスのうち、Fabbleに近いものを参照しながら、Fabbleの機能と利点を紹介したいと思います。