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女性エンジニアキャリア特集

培ったスキルを次に活かせる、積み重なっていく感じが好き——TOTO 根岸知子氏

お店や公共の施設などでは、手を差し出すだけで自動的に水が出てくる「自動水栓」は珍しくなくなった。TOTO株式会社 総合研究所 商品研究部 流体・機構研究グループの根岸知子さんは、2人のお子さんの子育てと仕事を両立しながら、自動水栓に内蔵されている発電機の開発に携わってきた。
体を動かすことが大好きで、マラソンのレースにも頻繁に参加する根岸さん。未知の世界を恐れず、切り開いていく姿は、エネルギーに満ちている。(撮影:水戸秀一)

デザイン性とエコを両立する「水力発電機」

——自動水栓「アクアオート」の開発に携わったそうですが、具体的には何を開発したのですか。

自動的に水が出るということは、人の手が近づいたことを検知するセンサと、水を出したり止めたりするバルブを動かす電気が必要です。コンセントがあればそこから電気を持ってきますが、ない場合は乾電池、あるいは流水を活用して水力発電機により電気を作ります。

当時、TOTOではOEM品の水力発電機を使っていましたが、初めて水力発電機を自社開発することとなり、私はコイル周りの開発を担当しました。以前は発電機が大きく、他の機能部品と一緒に洗面カウンターの下に設置していました。車いすでの利用やデザイン性を考慮すると、カウンター下の機能部品はない方が好ましいことは明らかです。そこで、スパウト(水の出てくるところ)に機能部品を全て内蔵した自動水栓を開発するプロジェクトが発足し、スパウトに収納可能な超小型発電機を開発することになりました。 

公共施設では当たり前になった自動水栓。「家庭にも広げていきたい」 公共施設では当たり前になった自動水栓。「家庭にも広げていきたい」

——研究開発をするなかで、特に難しかったのはどういう部分ですか。

水力発電機は、水車の回転エネルギーと発電に必要な負荷をマッチングさせなければなりません。水車を設計している技術者と話し合ったり、実験を繰り返したりしながら、マッチングさせていくことが一番難しかったと思います。

また、以前の発電機は1分あたり4Lの水流で発電していましたが、節水効果を高めるため、流量を2Lに減らす狙いもありました。一方では、センサやバルブが必要とする電力を供給しなければならず、少ない水流で同等に発電することも、とても難しかったです。

試作品を作って水を流し、目標としていた電力を超えた時は、とてもうれしかったですね。 

技術と日常がリンクしていて、面白い

——その後はどのような研究をしてこられたのですか。

海外で販売しているレインシャワー「Aimes EcoPower LED rain showerhead」という製品向けの大電力水力発電機も開発しました。このレインシャワーは、シャワーブースを演出するLED照明に必要な電力を水流で自己発電するものです。その他、いくつかの発電機を開発しましたが、最近は「ウォシュレット」や、一体形便器「ネオレスト」の要素機構の研究に移っています。発電とは直接関係はありませんが、機電に関わったことで得たスキルが生かせていると思います。

——身近なところに、根岸さんの研究や開発の成果があるのですね。

そうですね。
TOTOの商品が実際に使われるのは、とても日常的なシーンですから、技術にいくら思い入れがあっても、「これは便利かな」、「私だったらいくら払えるかな」などと、一人の消費者の目線になってしまうことがあります。技術と日常が密接にリンクしているのは、この仕事の面白いところだと思います。 

中央がアクアオートの超小型発電機、左はレインシャワーの大電力発電機。 中央がアクアオートの超小型発電機、左はレインシャワーの大電力発電機。

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