企業もはじめるFab&Hack
「まるでアイドル育てゲー」コスプレからハッカソンまで、東芝の新しいチャレンジが詰まったFlashAirの歴史
2015年4月に開催したFlashAirハッカソンは、MFT2014のとき、東芝のブースの裏にGUGENのブースがあったことがきっかけだという。
「MFT2012でP板.comが配布したはがき型の基板の設計を僕が作ったのが縁となって、MFT2014でGUGENの人たちと再会した際にハッカソンの話になったのがきっかけです」(米澤さん)
「もともとハッカソンはやりたかったのですが、どうやったらいいかわからなくて保留していたんです」(高田さん)
GUGENと組んで開催したFlashAirハッカソンは、イベント後の資金調達のサポートにMakuake、ネットでの販売のサポートにAmazonやBASEが入るなど製品化を強く意識した組み合わせに注目が集まり、アイデアソンを含め3日間の開催で有料にも関わらず100人以上のエントリーがあり、過半数がハッカソン初参加だった。ハッカソン終了後も半数近い参加者が継続して開発する意思を示しており、東芝も製品化をサポートしていくという。
「これだけすごい技術者の人が集まってくれて、社内でそういう人たち集めようと思ったらほんとに大変なところを、お金を払って3日間も費やしてプロトタイプ開発してくれることに感動しました。非常に熱心で、プレゼンテーションのレベルも高く、ここまで真剣にやってくれる人たちのアイデアをいったん形にできたというのは非常に成果があったと思います。
ただこれを本当にビジネスにつなげるところはやっぱり大変です。今後どのようにサポートしていくか探りながら活動を続けたいと思います」(高田さん)
「アイドル育てゲーみたいなものです」
最後にずっと気になっていた事を聞いてみた。デジカメや開発ボードなど用途別にプロモーションする上での苦労はなかったのか、社内での合意形成は大変ではなかったか。
「デジカメ用途として使っている機能は一部で、対象もコンシューマ向けなので、一般の製品同様、営業部門が担当しています。ただ、私たちでやっているような全部の機能を対象とした取り組みはアングラですから(笑)」(高田さん)
「こういう活動を主担当の人たちだけでやっていたら、自分たちのミッションをこなすために、その中で頑張る訳ですが、僕たちみたいな業務外の人間が絡むと無責任にいろんなことが言えるんですよ。でも、乗りかかった船で、だんだん責任感が出てきて、今では『こうなったら何とかしてこの路線で天下を取ってやるぞ』って気持ちになっています」(児玉さん)
「確かにメンバーだけだったら、ここまでの広がりはありませんでした。製品担当者は基本的にマス向けの売り方で、大企業向けのビジネスが中心になって余裕もなくなりますから」(高田さん)
「大きなマーケットに向けた売り方のほうが短期的な成果も出やすいじゃないですか。僕らがやっているのは、ある意味アイドル育てゲーと同じですよ。歌が下手だからトレーニングして、今度は踊れないからダンスのレッスンをしてみたいな感じで、ちょっとずつ色んなことができるようになって、プログラムが動く第三世代になってようやく最初に言っていたことが実現できてスタートラインに立った。これからですよ」(児玉さん)
「これまでの活動を通じて集まった意見も製品のアップグレードの参考になっていますし、最先端の人たちがどういうことに興味があるのか、開発者は常に意識していますね」(笠原さん)
「個人や少数のチームのほうがプロトタイプを作るのが容易で、開発のサイクルも速くなってくると思います。そういった流れの中で大きな市場で見た場合でも、個人やMakersを支援していく意味は大きいと思います」(米澤さん)