大品モノラボ2016レポート
僕たちはどうやって資金調達に成功したのか——話題の製品を手掛けるスタートアップ開発秘話
前年1月に続き、2016年も品モノラボ主催のイベント「大品モノラボ 2016」(以下、大品モノラボ)がDMM.make AKIBAで1月15日に開催された。品モノラボは東京・品川をベースとしたものづくりコミュニティだ。大品モノラボは普段行っている各自の作品発表会の拡大版で、前年同様150人のMakerが参加。プレゼンテーションに作品展示、LT(ライトニングトーク)で大いに盛り上がった。今回は、クラウドファンディングを通じて資金調達に成功したスタートアップ2社のプレゼンテーションを中心にレポートしたい。
品モノラボとは?
品モノラボは、品川で働いている、あるいは住んでいるなど、品川に縁のある人を「ものづくり」というキーワードで集めようとしているコミュニティだ。これまで定期的にイベントを開催し、バンドのようにメンバーを見つけてものづくりデビューすることをコンセプトとしている。活動の詳細については前回のレポートを参考にしてほしい。
100世帯にリサーチしながら製品にしていったMabeee
今回は品モノラボの常連でもあるスタートアップ2社の代表が揃って登壇。それぞれ、クラウドファンディングで目標金額を大きく上回る資金調達に成功した製品の舞台裏を語った。
最初に登場したのは、乾電池で駆動するものをIoT化する乾電池型ガジェット「Mabeee」(マビー)を開発したノバルスの代表取締役岡部顕宏氏。Mabeeeは単三形乾電池と同じ形状/サイズで、中に単四形乾電池を入れて単三形乾電池に対応した製品に装着。スマートフォンから制御することで、スイッチのオン/オフやミニ四駆のおもちゃの速度制御など、さまざまな動きが可能になる。
もともとはセイコーインスツルに勤務していた岡部氏は、企業の枠を超えた製品開発コミュニティプロジェクト「ヤミ研」に参加していた。その中で、エッジのたった良い企画なのに社内で埋もれてしまっている企画は無いか、それをどうやったら具現化できるかというテーマで議論していた中で誕生したのがMabeeeのアイデアだった。
平日の勤務の傍ら試作品を作り、居酒屋に集まって評価/検証を繰り返し、週末は公民館に子供のいる家族を招待してユーザーテストを繰り返した。製品が受け入れられるか心配だったこともあり、テストに参加した家族は延べ100世帯にも上った。
「テストを経て、お母さんも含めて楽しんでもらえるということが確信できるようになったし、この過程がなければ単に作っただけ終わっていたと思います」(岡部氏)
その後、助成金制度に採択されたことやVCからの支援もあり起業を決意。セイコーインスツルを退職し、2015年11月にmakuakeでMabeeeのプロジェクトを公開した。
約1時間で目標額をクリアし、最終的には目標額の10倍を超える資金を調達することに成功。 クラウドファンディングでの反響を受け、メディアからの取材やTV番組の出演も増え、その反響が資金調達額を伸ばすという好循環を生む結果にも繋がったという。
現在はノバルスにフルコミットで在籍するスタッフと、企業に在籍しながらボランティアで開発に参加するエンジニアとの混成チームで開発が進められている。ボランティアで参加するエンジニアにとっては、makuakeでの反響や最終製品に携わることが大きなモチベーションになっているそうだ。現在は量産化の準備を進める一方で、MaBeeeを使って簡易なIoT製品を開発する特別授業を高校で行う準備も進めているそうだ。ちなみにクラウドファンディングは継続中で、2016年2月10日までmakuakeで購入可能だ。