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Fabbleの使い方

ものづくり教育の現場でFabbleを使う——慶應義塾大学SFC「オープンデザイン実践」での取り組み

生煮えツールの実験の場として

2013年当時Fabbleはまだ「作りかけ」のWebサービス(その頃は“GitFab”と呼んでいました)でしたが、この講義を下支えするために、完成を待たずして投入することにしました。履修者と共にFabbleを利用し、良し悪しを語り合い、開発チームが可能な部分から即座にツールに反映していくというサイクルを講義と並行して回します。オープンな議論のもとでFabble自体がアップデートされていくプロセスを、履修者がユーザ視点とデザイナー視点の両方から共有することが、オープンデザインの学びにつながるだろうと考えました。

一点ものの入力装置を作る ~Open Mouse Project~

この講義の具体的な内容について紹介したいと思います。この年は、大量生産されているデバイスを自分の生活/身体/嗜好/目的などに応じてカスタマイズしてパーソナルなツールとしてデザインし直すという課題に取り組みました。ターゲットとして選んだデバイスが「マウス」です。昨今タッチパネルやトラックパッドなど、他の入力デバイスの台頭に押される感のあるマウスですが、それならばより個人的な、より状況に特化したデバイスとして再設計しようというのがこの課題の主旨でした。

講義で用いたマウス(Open Mouse Project内の「living mouse」 ページより)。 講義で用いたマウス(Open Mouse Project内の「living mouse」 ページより)。

最初のステップとして、履修者に同じボール式のマウスを配布し、それを一緒に分解していきました。マウスの構造はとても簡単で、マウスの移動に伴うボールの回転が、X軸とY軸に対応するギアの回転に物理的に変換され、その回転をセンサで読み取ることで、位置の変化をコンピュータに入力します。このシンプルな機構は、電気的/機械的な専門知識を持たない学生にも、分解/加工/拡張の入り口を与えてくれます。

マウスを分解する(「living mouse」プロジェクトページより)。 マウスを分解する(「living mouse」プロジェクトページより)。

次に、自らの生活における入力デバイスの使い方について再度意識的に観察/分析し、既存の入力デバイスの不足点や、可能な工夫などに関して提案/議論を行います。その上で、マウスを作り変えるアイデアを考え、そのシナリオや実現手段について検討を開始します。さらに、実際に作る過程の中で、定期的にプレゼンテーションを行い、意見を交換してフィードバックしていきました。

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