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ものづくりの人が知っておくべき権利

知的財産権の戦略的な活用方法

最近では、YouTubeなどの動画サイトやブログ、SNSなどで技術的な内容を紹介するケースも増えています。自身が研究したり新しく発明した内容を、誰もが簡単に情報発信できる時代では、情報をオープンにしてフィードバックをもらいながら改良を重ねていく、という方法もあります。

SNSなどで情報公開する際には注意が必要

しかし、その内容があまりに詳細すぎると、特許や意匠に関して公知(世間一般に広く知られること)となり、いざ特許や意匠を出願しようとしても登録できない、といったこともありえます。特許や意匠は、これまで世の中になかったという新規性や創作性があることによって保護される権利であるため、出願前に公に内容が知られては権利を主張できません。そのため、インターネット登場以前から、公に公開する前に企業では事前に特許や意匠を出願しているケースがほとんどで、インターネットが登場したことによって、企業はより社内の情報漏えいをどう防ぐか、といったことを考えるようになりました。

しかし、サービスやプロダクトのコンセプトムービーのみでは、特許や意匠の登録の道はなくならないこともあります。プロダクトで何ができるかというコンセプトを示していても、そのコンセプトではなく筐体の内部の機構等に新規性がある場合には、内部でどのような動きとなっているのかを明らかにしていなければ問題ないとのこと。個人でものづくりをする人は、情報を公開する際には新規性や創作性などに留意しながら、どういった情報を公に開示していくのかを意識しておいたほうがいいでしょう。 

特許権や意匠権は、もともとはオープンにすることを前提にした法制度

これまで特許権や意匠権を出願しない限り、アイデアやデザインはパブリックドメインとして誰もが使えるような仕組みで、そのため企業や発明家は特許を出願して権利を守り、独占的に使用しようとしていました。しかし、本来の特許の考え方では、アイデアをもっとオープンなものとして位置づけているのです。

特許とは、アイデアを特許庁に出願し登録させることで一覧化し公に公開することで、申請内容や技術的な新規性について誰もがその内容を把握することができる、というのが本来の目的なのです。誰もが内容を把握できる代わりに、20年間だけ独占的に保護され、その使用料を徴収するなどができるというものであり、単に独占権を与えるイメージとは違ったものなのです。つまり、特許や意匠を特許庁に申請したら20年後にはオープンになってしまう、ということでもあるのです。

例えば、特許が切れてしまうことを見越した取り組みとして、ジェネリック医薬品があります。ジェネリック医薬品は、特許に登録されている内容をもとに事前に研究開発を行ない、特許が切れた直後に販売を開始する、という研究開発と販売スケジュールを組んでいるのです。

20年という期間限定の特許使用権と引き換えに、特許内容がオープンになるということは、アイデアに有用性があり本当に権利を保護したいのであれば、あえて特許に申請せずに永遠に個人や企業内でクローズドにしておくことがベストなのです。例えば、コカ・コーラ社が提供するコーラの成分の配分量は秘密として公開しない、といった運用方法を取っているのも、特許利用料を得るよりも自社で秘密にしておくことにメリットがあると考えているからだと思われます。 

知財をどういった戦略で運用するかがポイント

最近では、2014年6月に電気自動車を開発しているテスラモーターズが同社が保有する約200もの特許および現在出願中の約300の特許について、他社が自由に利用可能で特許侵害の申し立てをしないことを宣言するという、特許のオープン化を行いました。これによって、いままでの企業の特許紛争を避けようとする動きを見せています。

この動きは、従来の特許を通じた権利保護が技術革新を阻害しているという考えに基づいています。その理由として、いまだ世界の乗用車販売台数に占める電気自動車の割合は低く、電気自動車全体の市場拡大を目指すためにはテスラモーターズ1社では限界があります。そこで、競合他社の参入を歓迎して電気自動車市場全体のプレイヤーを増やし、結果として電気自動車市場全体の活性に繋げ、それによってテスラモーターズの事業を拡大することを見越した戦略なのです。

特許をただ保護するだけではなく、こうした特許をオープンにする動きは、事業を行う上でのメリット/デメリットを考慮した上で判断すべきものです。知財をただ保護するのではなくどのように知財を活用していくか、事業の戦略としてどう位置づけるのか、といったことも考えるべきものだと言えるでしょう。

【取材協力】シティライツ法律事務所 水野祐弁護士

 

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