3Dでハードコアな超高速ものづくり《最新事例》
ヤマハ×革!? 3D技術で企業のレジェンダリーデザインを引き継ぐ
ヤマハデザインのDNAに関わる“革”とは
ヤマハの歴史とDNAを探求した製品にする。そうコンセプトの軸を固めたゴンザレス氏は、街を歩いて革のサンプルを集めた。
その理由は、1978年にヤマハから発売された「CP80/70」にある。「CP80」といえば、世界中のアーティストに愛されるグランドステージピアノだ。最近ではアリシア・キーズが「CP-80」を演奏するPVをSNSにアップロードして話題を呼んだ。
実は1976年の「CP70」、1978年の「CP80」それぞれに革が張られている。ヤマハのデザインセンターで実物を見たゴンザレス氏はそのフォルムや企業ブランドに感銘を受け、「CP80」のレジェンドを引き継いだデザインを施そうと決めた。
コンセプトを受けて、メカ設計の部門で実際の製品化の方法が検討された。今製品化するにあたっては、耐久性や重量、コスト面も考えてプラスチック素材という条件での達成が必須である。方法を探る中で浮かび上がったのが、構想と同じ時期に富士精工株式会社から提供を受けた、ケイズデザインラボの「D3テクスチャー」=“革シボの施されたプラスチックの成形サンプル”だった。
「この技術でいけるのではないか」。楽器・音響開発本部の島津剛氏はそう判断し、ケイズデザインラボに連絡。試作のためまずは実物の革をスキャンして、プラスチックでの再現性を試してみることとなった。
先述の通りデザイナーが集めた革を東京の事務所に送り、何種類もスキャンを行う。最終的に選定し、深さや倍率を変えて、計6種類の革シボデータをデジタル加工した。
上がってきた成形サンプル品を前にして、設計の開発関係者はうなった。よくない方のうなりである。想定以上に面白く仕上がったものもあるが、スキャンしたデータと随分違う印象で出力されるものもあった。革が生々しすぎ、気持ち悪く感じるという意見もあり、実物の革をスキャンしてテクスチャーデータを作り成形するという手法自体に見直しが入ることになった。