3Dでハードコアな超高速ものづくり《最新事例》
技術が産む美しさ——ソマルタ廣川玉枝が紡ぐテクノロジーと伝統の系譜
OculusとFreeFormで未来を垣間見る
2015年1月にラスベガスで開催されたInternational CES(Consumer Electronics Show=全米家電協会主催の見本市)では、「Oculus Rift」と「FreeForm Sculpt」を組み合わせた展示も見受けられた。物体に触っている感覚を得ながら、リアルタイムに目の前で物体の形を変えることができる。仮想空間での彫刻が、より没入感を上げて実現されることになるだろう。
- Oculus Rift=アメリカOculus VR社が開発した、頭部に装着するディスプレイ装置。頭の動きに表示が追従し、広視野角で仮想現実(バーチャルリアリティ)に特化している。
- FreeForm Sculpt Geomagicが新しくリリースしたFreeFormシステムデバイス。
廣川玉枝氏の技術への好奇心と覚悟
展覧会と同時に発表されたSOMARTAの2015年春夏コレクション。
時の流れや年代に耐えうる作品群を作り残していきたいという想いから、テーマは時間を司る神「クロノス」とし、伝統と最新の技術を融合させた艶やかな和の「キモノクチュール」が発表された。
京都で460年の歴史を持つ友禅染の老舗「千總」、「岡重」、「和晃苑」との協業によるデジタル技術と職人の手加工による「ハイブリッド友禅染め」をはじめ、西陣織りの「細尾」を加えた4社の伝統的な技法や技術を取り入れたドレスやジャケットが展開されている。
最新の技術はもちろん、何百年も培われた技術であっても革新をかさね、日々進化を続けている。技術が単に“目新しいもの”としてしか扱われない場合、おそらく文脈や歴史から乖離したものになるだろう。
廣川氏は、既存の慣性や概念を問い直しながら、テクノロジー、人類の進化と伝統への多大なる好奇心と尊敬をもって、臆する事なく自身のクリエイションに取り入れる。実用可能な形に表現として落とし込んだとき、次につながる一手になるのかもしれない。
その姿勢とまとめ上げる細部までのこだわりが、時系列にとらわれることのない、しなやかで強度のある美へつながっている。