Makers’ Base連載企画「Makers’ Bar」
「日本」を表す5×5×5cmのキューブとは?
日本の色を透明に表現する
言葉、ファッション、美術……日本独特の文化にもさまざまなものがありますが、「色」に着目したのがこの作品。と言っても見た目は無色透明なアクリル板の積み重ねなので、不思議に思われるかもしれません。
実はこの作品、いわば、アクリルで作られた一冊の「日本の色」をアーカイブした本です。ページをめくると、そこにはびっしりと日本固有の色を表す言葉と、その色を再現するために必要なRGB/CMYKの数値のリストが! 無数の色の情報が詰め込まれた、色のない本。小説でも絵本でもありませんが、レーザー刻印されたその一行一行から、どんな色なのかを思わず想像してしまう一冊です。
ひらがなの美しさを、今一度みつめる
「日本」というテーマに関心を持って初めて参加された方が作ったのが、このキューブ。普段から書に関する活動をしており、自分の名前を草書や行書などの異なる書体のひらがなで書くワークショップを開催したり、ひらがなをモチーフにプロダクトを制作したりしているので、日本固有の文字「ひらがな」を生かした作品になっています。
升の中にLEDの赤い光で「さくら」の文字が浮かび上がる、何とも風流なひらがなのキューブ。第2回の記事で、ワイヤレス給電を用いた星座の浮かび上がるキューブを紹介しましたが、こちらはその作者とのコラボ作品でもあります。下の台が給電の役割を担い、升の中にコイルとコンデンサ、そしてLEDが収められています。紙に書いたひらがなをスキャンしてレーザーカットしたアクリル板を通すことで、赤い光で文字が浮かんで見えます。LEDの強い光を和らげるために、和紙を透かす一工夫も。 折しもこの日は、桜の開花宣言直後。会場からは「これで日本酒が飲みたい!」の声が上がりました。
アナログ×デジタルな、これからの日本の工芸
長く継承されてきた伝統的な手仕事の技術と、最新技術との共存のありかたを模索し紡ぎ出したい。そんな思いでデザイナーのユニットが制作したのは、艶が美しい「3Dプリント×漆工芸」で作られたこのキューブ。制作の際には、漆職人に塗りをお願いして完成しました。
FFF(熱溶融積層)方式の3Dプリンタでキューブを出力し、研磨して積層痕を薄くした上に漆を塗っています。重ね塗りを行う漆工芸は「角をきっちり出した造形」を仕上げることが困難です。その特性を予め考慮に入れて、塗りを施して完成したときに美しく見えるよう、キューブのかたちもデザインされています。
デジタルが得意とする造形と、職人にしかできない丁寧な仕事が出会うことで生み出される美しさが好評を博し、この「3Dプリント×漆工芸」のキューブが「美しい」賞を受賞しました。