2020年プログラミング必修化!「作る」ことで分かるSTEM教育
第2回 フィジカルコンピューティング~実践的STEM教育のススメ~
MakerムーブメントとSTEM教育
2005年、1つのツールキットがイタリアで誕生しました。「Arduino」です。
当初から教育を目的とし、機能を絞りました。安価なボード、扱いやすいプラットフォーム、オープンソースハードウェアといった考え方が、ものを作る人たちに受け入れられて瞬く間に世界中に普及しました。
コンピュータでアクチュエータ(LEDやスピーカー、モーターなど何らかの動作をするもの)を動かす。コンピュータでセンサからのデータを取得する。産業用でしか考えられなかったことが、ものを作るすべての人に可能になりました。本格的なフィジカルコンピューティング時代の幕開けです。フィジカルコンピューティングとは、コンピュータを単なるツールとしてブラックボックス化するのではなく、電子回路やプログラミングを自分の身体を使って学び、学んだ原理原則を基に人とコンピュータの新しい関係をデザインするという考え方です。Arduinoをきっかけにさまざまなボードが作られました。2012年にはLinuxで動くシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」が登場し、パソコンそのものが安価に入手できる時代となりました。
2010年代に入り、重要特許が切れたことから普及版の3Dプリンタが登場し、市場を席巻しました。
同時に安価なレーザーカッターなどデジタル工作機器が個人でも入手できるようになりました。
小型のコンピュータとデジタル工作機器。あらゆる人が、自分の頭で考えたものを作り、コンピュータを使って思い通りに動かすMakerムーブメントが起きたのです。
新しい産業革命にもつながるといわれるこの動きは、STEM教育を実践していく強力な後押しとなりました。
生徒が自分たちで考えた多様なものを自ら作り動かす道具が、学校現場でもそろえられるようになりました。授業という時間的・空間的制約の中でも、本格的なものづくりができます。
ものづくりを通して、プログラミングやエンジニアリングを身に付け、テクノロジーやサイエンスを自ら学びとる実践的STEM教育が可能になったのです。