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2020年プログラミング必修化!「作る」ことで分かるSTEM教育

第4回 新たなマーケットの予感。STEMに沸き立つ教育市場の最前線をレポート

社会との関わりの中でプログラミングを意識する

——どんな教育的な効果が出ていますか?

前原:現場となる塾や教室の先生方に聞くと「集中力のなかった子がプログラミングやものづくりを通して集中力を身につけた」という声をよく聞きます。教室でふだん行われている算数や国語といった教科まで集中してやるようになった子も多くいるそうです。また、保護者からは、家庭での親子の会話が増えたという話もよく聞きます。教室で学んだもののしくみについて子どもたちが体験の中から具体的に話してくれるそうです。

例えばテーマのひとつに「トイレ(洗浄機能付き便座)の製作」があります。便器に近づくとふたがあき、便座に座ってスイッチを押すとノズルが伸び、便座から立つと自動でノズルが引っ込むメカニズムをプログラミングとブロックで再現します。実地で学んだ子どもたちが動作原理を保護者の方に語るわけです。家庭や社会との関わりの中で、プログラミングや機械のメカニズムを意識できる子が育ってくれるのはうれしい限りです。

内容は実際にトイレを作っているメーカーを取材して得たものです。本物だからこそ、子どもたちが家庭で保護者と話をするときに説得力が生まれると考えています。

「もののしくみ研究室」で製作されるトイレ。洗浄機能のメカニズムがよくわかる。 「もののしくみ研究室」で製作されるトイレ。洗浄機能のメカニズムがよくわかる。

指導者はスペシャリストでなくてもいい

——学研の目指すSTEAM教育に関して将来的な課題はありますか?

前原:教材会社として2020年の小学校でのプログラミング教育の必修化には関心を持たざるを得ません。塾・教室に限らず、関連書籍の発行や幼稚園や小中学校向けの教具の開発、受託業務や検定事業など、グループをあげて総合的に取り組む予定です。

特に、STEAM教育に特化した指導者の育成は課題のひとつですね。ただ、現場となる教室では日々指導ノウハウが蓄積されています。例えば学研教室では、学研で研修を受け、指導者として認定された一般の方が自宅を開放して行っています。みなさん、プログラミングやものづくりの専門家ではありませんが、現場では初歩的なスキルがあれば十分です。なぜなら、すぐに子どもたちのスキルは先生を越えていくからです。先生として、メンターとして大切なことは、ひとりひとりの個性を把握し、適切なタイミングで適切な質問をし、ヒントを与えること。そのノウハウは学研教室の算数や国語の授業で今まで培ってきたものと変わりありません。その点で、指導者の育成は克服可能な課題とも考えています。

「もののしくみ研究室」では、先生は適切なタイミングで適切な質問をし、ヒントを与える。 「もののしくみ研究室」では、先生は適切なタイミングで適切な質問をし、ヒントを与える。

 

最終的にはカリキュラムさえも子どもたちの主体性に任せるLITALICOの教室。芸術や社会との関わりを意識させながらものづくりを体験させる学研の教室。STEM教育へのアプローチは異なるが、教育産業に関わる企業として、いずれも大きなビジネスチャンスと捉えていることに変わりはありません。2020年の小学校におけるプログラミング教育の必修化に向け、この流れはさらに加速されていくはずです。公教育に先行して何ができるのか? 関連する各企業が問われているところです。

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