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アジアのMakers by 高須正和

「人がMakerになる場所」古都・成都で開かれた中国4カ所目のMaker Faire、Mini Maker Faire 成都 2016レポート

成都のMaker文化を豊かにする海外からの出展者

今回のMaker Faire 成都には海外からの出展者も多く招かれている。Maker Mediaのデール、サンフランシスコのExploratoriumで働きつつ、個人でもTeach me to MakeというMaker教育活動を行っているマイケルとジュディ、カナダからMakeFashion、日本からこさんくんのロボットバンドロボットプロレス「できんのか!」ヒゲキタさんの3Dプラネタリウムといった世界各地のMaker Faireでおなじみの顔ぶれが成都に集まった。いずれもスタートアップや大きな利益を生み出している人たちではなく、自分の興味をつきつめて多くの人を引き付けるに至ったプロジェクトたちで、成都の人たちも引き付けていた。

ロボットプロレスの毎回の公演は大人気。 ロボットプロレスの毎回の公演は大人気。
カナダからのMakeFasionは成都のクリエイターたちとファッションショーを行った。 カナダからのMakeFasionは成都のクリエイターたちとファッションショーを行った。
MakeMediaのデールも講演を行った。「MakerマインドはCando,できるということ。成都(ChengDu)はCandoに通じる」 MakeMediaのデールも講演を行った。「MakerマインドはCando,できるということ。成都(ChengDu)はCandoに通じる」

成都でMaker Faireを開くに至った「天の時・地の利・人の和」

今回のMaker Faire 成都は、深センのMaker Faireをオーガナイズしている柴火創客空間(Chaihuo MakerSpace以下Chaihuo)が成都にも進出してきて行っている。Chaihuoは、この連載でも紹介したSeeedのエリック・パンが2011年に創業した、深セン最初のメイカースペースだ。2015年に中国の李克強首相がこのChaihuoメイカースペースを訪問し、名誉会員としてサインしたとことで、中国全体でMakerのブームが始まった。

非営利で運営していたChaihuoだったが、中国全土からの見学対応だけで時間を取られ、業務に支障が出るような状態になった。もともと中国国内のビジネスはあまり行っていなかったSeeedのもとにも、海外向けに作っていたMaker向け教材のオーダーが中国国内から求められることが重なり、SeeedはChaihuoを深セン柴火创客文化传播有限公司(Chaihuo Maker Culture Communication Co,. Ltd)として会社化することになった。

名前の「Culture Communication」に、Seeedの姿勢が明確に表れている。スタートアップブームに沸く中国でも、やはりエリック・パンの視点は人々が日々の仕事とは別のところで始める同人デザイン的なところにある。画期的なイノベーションはむしろそこから始まることが多いのは、デールほか多くのMakerたちが指摘しているところだ。

だが、中国で最も生活費も人件費も高い場所になった深センはそうした「変わったことを思い付きで始める」にはますます向かない場所になりつつある。人々は自分のビジネスをスケーリングさせるために深センに集まり、猛烈に働く。深センの人口は20-30代が60%強を占め、高齢者は2%もいない。余暇の概念の薄い場所である。ここ30年の間に急速に大きくなった人工都市に、生まれて死ぬ日常生活を見つけるのは難しい。

成都は四川省の省都であり、都市部だけで700万、周辺地区含めると1400万の人口を抱える大都市だ。中国の国家戦略として2000年から始まった西部大開発の中心地で、市内には建設中の建物が目立つ。それでも深センとはだいぶ違い、夜9時には大半の店は閉まるし、自転車は電動でなく人間がこいでいる。これまで紹介したとおり、音楽や絵画を学ぶ人も多い。生まれて死ぬ日常生活のある場所といえるだろう。

エリック・パンはMaker Faire 成都でのプレゼンで、天の時・地の利・人の和として以下のように語った。 

天の時:
成都も創業ブームに沸いていて、政府も投資家もメイカーのような「新しいこと」への後押しがある

地の利:
歴史のある大都市であり、中国各経済圏とのハブであり、少数民族とのダイバーシティもあり、食べ物もおいしい成都の実力

人の和:
ローカルコミュニティが多く、メイカーブーム前から活動しているメイカーたちが多く住む

成都の地の利について語るエリック・パン。彼は社会人としてのキャリアを成都のIntelでスタートしており、この街の感覚がある。 成都の地の利について語るエリック・パン。彼は社会人としてのキャリアを成都のIntelでスタートしており、この街の感覚がある。
成都と深センのキャラクターの違い。(筆者が東京大学でのイベント:メイカーズ×アジアでのプレゼン時に制作。資料全文はこちら) 成都と深センのキャラクターの違い。(筆者が東京大学でのイベント:メイカーズ×アジアでのプレゼン時に制作。資料全文はこちら

深センがスタートアップを起こしたMakerがスケールするための場所であるなら、成都は人々が新しいことを学び、Makerに「なる」ための場所として適しているとエリックは考えている。実際にそのあとの数日で、2015年以前から長く活動するメイカースペースをいくつも見た。

成都の武侯区にあるメイカースペース「木牛流馬」2013年から活動している。武侯とは三国志の諸葛孔明のことで、木牛流馬は孔明が発明した木製のロボット馬のこと。 成都の武侯区にあるメイカースペース「木牛流馬」2013年から活動している。武侯とは三国志の諸葛孔明のことで、木牛流馬は孔明が発明した木製のロボット馬のこと。

中国とひとことで言っても、14億の人々がいる広大な場所である。
場所ごとに異なる長い歴史と、多くの民族や文化がある。実際にMaker Faire 成都のオーガナイザーの一人、西洋的な顔立ちをした人に出身地を聞いたら新疆の生まれで、成都は地理的に隣なので多く働きに来ているようだ。

Maker Faireの役割はそうした異なる出自のMaker文化を互いに引き合わせ、触発し、楽しむことである。成都のMaker Faireは深センとは明らかにキャラクターが違うが、こちらも確かににMaker Faireらしいものであった。2017年はおそらく時期を変えて、温かい時期にまた開催する予定と聞く。また、西安など中国のほかの都市でもMaker Faireは企画されているようだ。

成都のMaker Faireは日本語・英語の出展フォームを設けて、海外からの出展も歓迎している。2017年のMaker Faire 成都が楽しみである。

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