女性エンジニアキャリア特集
異業種とも連携した「街作り」が夢——日産自動車 田所ゆかり氏
フランスでは男女も国籍も関係ない
——フランスでは女性のエンジニアも多いのですか。
私がルノーで仕事をしていた開発部門にも女性は結構いましたし、しかもフランス人ばかりではありませんでした。開発部門のトップになっている女性もいました。もともと移民がとても多い国なので、国籍も男女も関係なく、一人の人間として扱われていると感じましたし、そういう環境があるので、女性エンジニアも集まってくるのかもしれません。
——そのままフランスで就職するという選択もあったのでは。
ルノーも視野に入れてはいましたが、フランスの就職活動は、卒業後1年ぐらいかけて希望するポストを探すというスタイルで、すぐに仕事をしたい私にはなじみませんでした。
また、パリでの生活は、美術館めぐりやショッピング、休暇には旅行もして楽しかったのですが、企業研究を進めるうちに、だんだんと、卒業後のキャリアは日本で歩みたいと思うようになりました。海外に出て改めて、日本の技術レベルが高いことを実感し、技術力を身に付けるのであれば日本だ、と思い至ったからです。
自由で議論も活発な職場
——現在の職場はどういう雰囲気ですか。
私の所属しているEVエネルギー開発部はエンジン開発など他の開発部署と比べると歴史の浅い部署なので、途中入社も含めていろいろなキャリアの方が集まっています。女性も多いですし、固定観念に縛られない自由な雰囲気で、議論も活発です。
——では日産を選んだ理由は。
ルノーで所属していた部署が日産と交流がある部署で、インターンシップで築いた人脈や、留学で身に付けたフランス語を生かすことができると思いました。
私はメーカー希望で、4月から働きたいと思っていたので、留学から帰国する12月まで面接を待ってくれる企業を探しました。当時「新卒採用の期間に受けてください」と門前払いの企業がほとんどだったなかで、日産は12月まで待ってくれました。トップがゴーン氏ということもありますし、ルノーとのアライアンス関係もあるので、一般的な日本企業とは少し雰囲気が違うのかもしれません。逆に普通に新卒採用時期で就職していたら、あまり自由に発言できない会社を選んでしまったかもしれないと思うと、よかったと思います。
今後もものづくりに関わっていきたい
——休日はどのように過ごしますか。
まず洗濯と掃除。それから車でスーパーに買い出しに行くのが、基本コースですね。ものがあふれているのは嫌いなので、部屋の片づけとか掃除は好きです。捨てるとすっきりします。
女性が仕事をするには家族の協力が必要だと思いますが、私の場合は一人で暮らししていたときより楽なくらい(笑)。夫は家事が割と好きで、いろいろやってくれるのでとても助かっています。
あとはフランス語と英語のオンラインのレッスン。ヨガとバレエのレッスンにも行きます。肩こり解消にも、気分転換にもなるのでいいですよ。
長い休暇のときは夫と旅行をします。今年3月にはマレーシア、ゴールデンウィークには熊本の阿蘇山に行きました。私は山登りが好きで、夫もつられて最近はまっています。
——いまの夢は。
以前から交通計画とか都市計画に携わりたいと思っていたので、ゆくゆくはそういう仕事をしたいですね。他の交通事業者の方、異業種の方とも連携して、街作りなどもできるのではないかと思っていいます。
これからもいろいろな経験を積んでいきたいですし、どの立場にあってもものづくりには関わっていきたいと思います。
——最後に、エンジニアを目指したい女性にメッセージを。
これから女性エンジニアも増えていくかもしれませんが、いまはまだ希少価値があります。その分、良くも悪くも注目されますから、そこをデメリットと思わずに、楽しめるといいのではないかと思います。
またよくいわれるように、男性目線だけではものづくりは偏ってしまうので、これからは女性目線の需要もますます増えると思います。女性のコミュニケーション能力や調整能力も、開発のなかで重宝されると思いますし、積極的にエンジニアとして活躍していただきたいですね。