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イベントレポート

社会に求められるファブ施設とは——ものづくりから始まるコミュニティの在り方

ファブラボはビジネスとして成立しない

ビジネスのセッションの様子 ビジネスのセッションの様子

ビジネスのセッションでは2014年からファブラボ太宰府を運営する嘉穂無線ホールディングスの柳瀬隆志社長と、2016年からファブラボ天神を運営するグルーヴノーツの佐々木久美子会長、そして筆者が、それぞれの施設の運営からファブラボがビジネスとして成立するかディスカッションした。ファブ施設の運営だけではビジネスとして成立しないというのが、2人の経営者に共通した意見だ。

佐々木氏の場合はITベンチャーの新規事業として学童保育に併設したファブラボを運営しているが、導入コストやランニングコストに対して、ものづくりを始めるまでのハードルの高さに課題があると指摘する。自ら手を動かして作る志向のある人が想定よりも少なく、採算性が低いためファブラボとしての機能を縮小し、需要の高い学童保育のサービスの中にファブ施設の機能を取り込む計画を明かした。

柳瀬氏はビジネスとして運営するファブ施設と、マーケティングとして運営するファブ施設を分けて運営している。ビジネス面では経営するホームセンターの商流を活用し、レーザーカッターの代理店事業を開始したほか、自社のホームセンター「グッデイ」で販売する商品として、木製の切り文字をレーザーカッターで製造している。ある店舗で試験的に販売したところ、月100点以上を売り上げるなど収益化のめどが見え始めているという。一方で採算性の低いファブラボを運営する理由としては、国内外のファブラボにつながるネットワークに意義があるという。自分たち以外のファブラボの取り組みを知り、交流することで単独のファブ施設だけでは得られない知見を得ることが重要だと話した。

施設利用料だけでは運営コストを賄えないことは、東京の大手ファブ施設の運営者も指摘している。施設運営そのものを目的とするのではなく、事業の目的や解決すべき課題に対して、ファブ施設が最適な手段であるかを検討することが事業者にとっては重要な視点だ。

Makerとしての生き残り方

ハナハナワークスの西村大氏 ハナハナワークスの西村大氏

運営者側の視点での議論が出た一方で、ファブ施設を利用する側の視点はどうか。西村大氏はWebサイト制作を生業としながら、趣味で制作していたコスプレ用の小道具制作に3Dプリンターを活用したことから、デジタルファブリケーションを活用したビジネスに足を踏み入れた。ファブラボ関内やDMMの3Dプリントサービスの立ち上げ、北九州のコワーキングスペースfabbitの運営に携わる。現在は沖縄にある創業支援施設「STARTUP CAFE KOZA」内にあるファブ施設「OKINAWA MIRAI FACTORY」を運営している。

個人クリエイターとして生きていくためには、コストと売価を意識しながら自らの作品を通じてWeb上でコミュニケーションを図り、ファンを獲得していくことが重要だと西村氏は語る。制作にはfusion 360、PRにはYouTubeやニコニコ動画を活用し、制作途中の作品を公開し反応を見ながら作品を改良していく。また廉価な3Dプリンターやレーザーカッターを活用することで、個人で製造可能な範囲を拡げていった結果、制作の依頼が舞い込むようになっただけでなく、ファブ施設の運営にも携わるなど、新しいキャリアの開拓にもつながったという。

STARTUP CAFE KOZAは沖縄の雇用を生み出すことを目的とした施設だ。その具体的な取組として、プログラミング講座など基礎的なITスキルを学ぶ環境を提供し、地元市民のキャリアアップや起業支援につなげるのが目的だ。そこで学んだスキルを発展させる選択肢のひとつとして、OKINAWA MIRAI FACTORYは存在している。行政からのニーズに対して廉価な機材と自身の知見を活用することで、最小のコストで最大の効果を生む。それがファブ施設の持続可能性にもつながることを西村氏はトークセッションの中で示した。

中小規模のファブ施設が抱える悩み

STARTUP CAFE KOZAが地元の雇用創出のために誕生したように、地方創生の手段としてファブ施設を活用する取り組みも少なくない。

地域資源がテーマのセッションに登壇した森川好美氏は、高知県中西部佐川町にある「さかわ発明ラボ」の運営に携わっている。町内の7割を占める森林を資源に、高価な機材の活用や大規模伐採を行わない、小規模な森林活用を通じて、新たな地域産業の創出するのがミッションだ。

森川氏はファブ施設が日本各地で増えていく中で、地域に受け入れられる施設にするにはどうするべきかを最初に考え、2カ月ごとに地元の木材を使ったワークショップを開催。アイデア段階から町民が参加し、段ボールで試作したものをベースに、地元のヒノキ材をCNCで加工してベンチを制作している。その他にも地元の木材を活用した商品開発プロジェクトを進めるなど、地域住民がデジタルファブリケーションのメリットを体感できる仕掛けを意識的に展開している。

森川氏は自身が運営する施設を「中小規模のファブ施設」と定義づけた上で、他のラボとの差別化や地元住民に受け入れられるか、運営が継続していけるかといった面で中小規模のファブ施設運営者は悩んでいると指摘する。森川氏はファブラボが国内外でネットワークを持つように、今後はファブラボ以外のファブ施設同士がつながる機会を設けていくことで、共通の悩みや課題を議論できることを望んでいると話した。

 

MAKERS & FABBERS 2017 in KITAKYUSHUを企画した背景として、田中浩也氏は「各施設での事例の共有や議論を通じて、共通の悩みを抱えた全国のファブ施設間、Makerスペース間でネットワークを構築したい。魔法の杖のような解決策が見いだせないとしても、コミュニティとして、共に歩んでいく関係性が生まれるイベントにしたい」と事前に語っている

ハコモノじゃないファブ施設であるために

工作機械の低価格化や行政からの補助金などファブ施設立ち上げのコストは下がっているが、日々の運営や集客、自分たちのスペースから生まれるものの有効な活用方法に教科書や定例のパターンは無い。地域社会やコミュニティに根付くためには、時間をかけて粘り強く接点を見つけていく努力も必要だ。

MAKERS & FABBERS 2017 in KITAKYUSHUのように志のある運営者同士が有機的につながることで、ノウハウの共有や交流だけでなく、今後はお互いの施設の付加価値を高めるようなアライアンスも重要になっていくだろう。

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